過去のお知らせ一覧へ戻る


2001年11月のFMICS



「動機」の息切れ

 「難しいリストラを成功させるカギは四つあると思う。(1)「目標」「優先順位」「戦略」を社内で共有する(2)再建計画を社内に信じてもらう(3)社内の意見を聞く耳を持つC経営者が社員を信用していることを示す信号をはっきりと出す。要はリストラに向けた社内の動機づけだ」(日本経済新聞2001年10月31日朝刊)と、カルロス・ゴーン日産自動車社長は提示する。彼が進めた経営再建計画「日産リバイバルプラン」実施以前に同社が抱えていた問題点は(1)明確な利益志向、(2)顧客志向、(3)社内横断的な協力体制、(4)緊急性の認識、(5)長期ビジョンの欠如であったとも指摘する。

 18歳人口減少の進行にともない、専修学校、短大、大学へと淘汰の波がヒタと押し寄せてきている。さらに、グローバリゼーションによる雇用の実力主義化が加わり、受験生の大学選択、企業の学生選択と、大学にとっては「前門の虎、後門の狼」を彷彿とさせる。他方、学生自身のおかれている状況も同じような様相を呈している。学校・家庭が彼らに時代の変化を伝え切れていないため、大学入学までは受験準備と携帯電話を媒介とした交友関係で生活が成り立ってしまっている。そして、大学3年間をさしたる目的意識も行動意欲ももたないまま過ごした後には、否応なく厳選採用の荒波に立ち向かっていかざるを得ない。学習の楽しさ、働く喜び、社会に生きる有難さを実感し得ないまま、自分探しもままならず「自立」を迫られていく。まさに「入口はますます緩く、出口はますます厳しい」という学生生活である。

 非営利組織の使命の共通項は「顧客の生活の改善」(ドラッカー)である。「自由競争になれば、役に立つものが勝つ」と落合信彦氏は言う。ならば、学習意欲、職業意識、市民実感のない生徒・学生たちに、現在と未来の生活の改善を自ら図っていけるように動機づけすることが学校人の務めであり、そこに使命を見いだし、具体的な目標を立て、実際に行動に移すことによってのみ、「役に立つ学校」という社会的存在感が高まる。

 「会社の実力とはつまるところ、社員の実力の総和です。社員に不安を与えず、思う存分働いてもらうことが会社の業績を高め、株主の期待にこたえることになる」と御手洗冨士夫キヤノン社長は取材に答える(同紙2001年10月21日朝刊)。大学の実力とはつまるところ、学生・卒業生の生活改善の総和であって、それは学習によってもたらされる。彼らに思う存分学んでもらうことが大学の業績を高めることになる。今日において学ぶ意欲を高める政策こそが何をおいても実行すべき施策であり、そのためには学校人自身がこれまで疎かにしてきた「学習という行為」に対して、自身の学ぶ意欲を高めることからはじめなければならない。グローバル化時代の大学は「要は学習に向けた学内の動機づけ(モチベーション)」が出発点となる。大学のバブル期が終わり、やっと大学らしい大学が誕生する時代になった。

(山本 明正)



キーワードは「自分探し」

 私の仕事を主人は茶化して「私立中学ルポライター」と言うが、そんなにカッコイイものではなく「おばさんレポーター」と呼ぶのがピッタリと自分では思っている。

 年の頃も同じくらいのご父母に交じり、学校説明会に参加してその様子をそのままルポしている。目線はあくまで「お母さん&小学生」。珍しいものを見つけたらデジカメでパチパチ撮りまくって、今夜お父さんに見せよう、くらいな気持で続けている。お母さんや子どもたちが足を止めて見ていたものは逃さない。例えば小さな花びんに生けられた花であったり、埴輪や猫の脳ミソだったり分別ゴミ箱だったりする。とにかく母親たちは何物も見逃すまいという感じで細かなところまでよ〜く見ているのだ。ほんの2時間ほどの説明会でその学校を知ることはほとんど不可能に近いが、不思議とその「雰囲気」が伝わってくるところが面白い。それこそが「学校らしさ」であり「個性」なのだと思う。「これぞ私学!」といつもニヤニヤしてしまうのは私だけか・・・。

 説明会のメインはやはり学校長からの話となる。建学の精神や教育理念は定番だが、いまの社会状況に合わせながらわかりやすく話してくれるところが何よりも素晴らしい。最近多い話題は、テロやインターネットの氾濫など。こんな訳のわからない世の中だからこそ、自分というものをきちんと持って生きることが何よりも大切、とどの学校も力説する。「自分って何だろう?」から始め、「自分探し」をしていくのだという。自分がわかってくると自分の周りの人についてもわかってくる。自己理解が他者理解へと結びつき、やがては「社会の中の自分」を意識できるようになっていくというものだ。そこには教科書など存在しない。いきなり、弁護士になるには?などという話をするわけでもない。まず、どんな職業があるのか?というところから始め、興味を持ち出したら、自ずとインターネットで調べたり、電話をかけたり会社訪問をしたりしていくのだ。そこには卒業生や父母が喜んで協力をしてくれるという態勢があたかも当然のように整っている。「私学の伝統、あったかさここにあり!」というところだ。

 このように、早い学校では中学1年生から大学のそのまた先の「キャリア教育」を始めているのである。受験勉強ガリガリまたは何となく(??)大学に入ったはいいが、さて何をしようかという学生とは明らかに違って当然で、その後の人生もしかりである。社会へ出たときに「ゆとり」を感じられてこそ「真のゆとり教育」なのであって、授業時間数を削ることではないし、削減してしまったらこのような教育はできない、と学校は明言している。そこには「2002年問題」(小中学校では新課程は2002年度開始)でも「週5日制」でも「総合学習」でも何でもかかってきなさい、という自信がはっきりと見える。「自分探し」がきちんとできている学校は強いのだ!

(山本 真美)

*CLI 学習情報センターの「説明会レポート」はこちらです。



ご案内 FMICS11月例会 (第422回例会)


 1998年新設の武蔵野女子大学現代社会学部では、1期生が3年生になって就職活動に取り組もうとする昨年秋、地域社会に眠っている企業経験者(定年退職者や主婦等)を「キャリア・カウンセラー」として起用して、学生の就職指導セミナーの講師を担当してもらっています。

 大学周辺地域に眠っているであろう人材にねらいを定め、新聞広告で募集をかけたところ、わずか7名の募集のところに133名の応募があり、しかも応募者はいずれも一部上場企業のトップ経験者をはじめ、赫赫たる経歴の持ち主ばかりであったとのこと。泣く泣く絞り込んで採用された講師陣により、それぞれの経験に基づいての実践的 な指導が展開されているようです。

 11月のFMICSでは、学生の就職支援に地域社会の埋もれていた人材を活用したこのユニークな取り組みについて、実施後1年を過ぎた時点の成果と課題などを、発案の潮木守一学部長とキャリアカウセラーの方々に語っていただきます。

 地域一番化戦略ACTIONを肌で感じていただきたく、お仲間をお誘いの上ご参加下さい。

【日時】 平成13年11月17日(土) 午後3時〜6時
     終了後にスピーカーを囲んでの懇親会も行います。

【会場】 武蔵野女子大学 7号館5階大会議室  「キャンパスマップ」

*三鷹駅北口より武蔵境駅行きバスで10分、または武蔵境駅北口より三鷹駅行きバスで7分、「女子学院前」バス停下車すぐ。
*詳細やその他のルートについては 「アクセスマップ」 を参照してください。

【テーマ】 新しい大学のカタチを考える
       キャリアカウンセラー・地域人財を活かす

【スピーカー】 武蔵野女子大学
  現代社会学部教授・学部長
 潮木 守一
 キャリアカウンセラー 島袋 晴海
   渡邊 克朗

【参加費】 会員 1000円  学生 500円  非会員 1500円

【申込&問合せ先】 11月16日(金)までに、出光 直樹 idemitsu@obirin.ac.jp までお申し込み下さい。


月例会一言案内

 名古屋大学での図書館長としての采配や大学院国際協力研究科の立ち上げなど、次々とユニークな試みをされてこられた潮木守一先生。この武蔵野女子大学での試みの手応えについて、先生の文章から紹介いたします。

「学校も変らなければ − 地域社会の人材をキャリア・カウンセラーとして登用する試み」 産労総合研究所編『企業と人材』Vol.34,No.774(2001年7月20日)より

 我々の期待は、こうした企業社会の先輩方に、自分の経験を学生に直接伝授して頂くことである。ただスタートする時、学生諸君にはっきり断っておいたことは「このカウンセラーの方々は、決してあなた達のために就職先の斡旋をしてくれる人ではない」という点である。だいたい他人に世話をして貰った就職先など、三日ももたない。就職先はあくまでも自分の実力で開拓するもの。その実力に磨きをかける手助けをしてくれるのが「キャリア・カウンセラー」の方々である。キャリア・カウンセラーの方々には、びしびし指導していただく事を頼んだが、皆さん、実に親身になって手を取り、足を取って指導してくださった。

<中略>

 学生諸君も、こういう先輩企業人の指導を受けたことが自信につながったことであろう。それぞれ、自信に満ちた顔つきで企業面接に出かけていった。今まさにこの新機軸の成果がどうのようになって現れるか、待っているところだが、6月初頭までの集計結果では、健闘の跡、著しいものがある。目下、一部上場企業へ内定という情報が、相次いで飛び込んでくる。いずれ成果は公表する予定であるが、我々の狙いはどうやら的中したらしい。世間では「女子大」というと、無風地帯と考えがちだが、そうではない、時代の変化のなかで、否が応でも変身を遂げざるをえない。これが時代の変化に対する、我々のささやかな発信である。


 潮木守一(うしおぎ もりかず)先生のプロフィールは、 http://www.musashino-wu.ac.jp/ushiogi/index.html にアクセスして下さい。キャリアカウンセラー制度については、「1998年4月以降の発表物」のフレームに進み、その中の、

などをご覧下さい。

 なお、先生の「ドイツの大学」「アメリカの大学」「京都帝国大学の挑戦」(いずれも講談社学術文庫)は、名著であるといわれてます。皆さまにはご一読されますことをお薦めします。



ご案内2 YFN11月例会 (第423回例会)

●今月のYFN・名古屋FMICSのスピーカーは、東海高等教育研究所理事の片山信之さんです。お話いただくテーマ、まさに“今”を語っていただきます。●大学淘汰の時代だからこそ、地域一番MPA戦略を構築しなければなりません。ミッション・パッション・アクションを束ねて、ミッション・戦略・戦術・戦闘力をブラッシュアップ。大学活きのぼりの新しいカタチを考えます。

【日時】 平成13年11月21日(水) 午後7時〜9時

【会場】  岐阜県羽島市間島 割烹 鯉正  TEL: 058−391−7325

【テーマ】 21世紀の新しい大学のカタチ考える
       東海地区大学事情と大学倒産を考える

【発表者】 東海高等教育研究所理事 片山 信之

【参加費】 4500円・懇親会費込み

【申込先】 YFN 事務局 林 憲和  nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



FMICS SD 123

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。

●今月も10月と同様に、定番のSDプログラムにかえ、筑波大学大学研究センター主催の「大学経営人材養成のための短期集中公開講座」に参加をいたします。会場は、茗荷谷・筑波大学です。お間違えないようご注意下さい。

《紹介先》 大学研究センター長 山本 眞一  syamamot@sakura.cc.tsukuba.ac.jp

【日時】 平成13年11月15日(木) 午後6時30分〜8時30分

【会場】  筑波大学大学研究センター 地下鉄丸の内線茗荷谷駅下車徒歩2分

【テーマ】 大学経営人材養成のための短期集中公開研究会
       現職アドミニストレーターからの発信

【スピーカー】 東京経済大学 学生センター学生課 青木 加奈子


*なお、12月からは新企画がスタートします。9月例会のゲスト・前日本私立大学連盟事務局長 日塔 喜一さんをアドバイザーとしてお迎えし、ご自身の著書 『機会均等へ向けて』開成出版 を読みこなしていきます。経常費補助金制度の誕生(昭和45年)以降の私学経営の軌跡をチェックします。
 *日塔さんの紹介ということで定価3000円 のところ2割引きで購入できます。
 《購入申込先》 開成出版 03-5689-7654



速報 12月のFMICS

 12月例会は、お二人のVIPに大学のウチソトを大いに語っていただきます。ゲストは退職金財団理事(前早稲田大学副総長)です。アフター月例会は割烹「京都」での恒例の懇親忘年会となります。

【日時】 平成13年12月15日(土)
          月例会 午後3時〜6時
          忘年会 午後6時〜8時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 (仮題)新しい大学のカタチを提言する
        ウチから見た大学/ソトから見た大学

【スピーカー】 退職金財団理事・前早稲田大学副総長 村上 義紀



速報 12月のYFN

●12月のYFNは、FMICSをYFNの成長を厳しくも暖かく見守って下さいました故大野一石師を偲び、追善シンポジウム(語り部は、退職金財団理事・前早稲田大学副総長村上義紀さん、中大総合企画課長三浦康秀さん、愛知大学関係者の皆さまです)と追善の会をもって月例会といたします。常に夫唱婦随で大学改革を支えられた奥様にも臨席いただきます。

【日時】 平成13年12月22日(土)
       追善シンポ 午前10時〜午後12時半
       追善の会  午後1時〜4時

【会場】  岐阜市米屋町 水琴亭  TEL058−262−0023
   *東海道本線JR岐阜駅(新幹線岐阜羽島ではありません)からタクシー10分

【テーマ】 身を持って一石を投じ 我らの心の柱石と
       なった師を偲びつつ 21世紀の大学を語る

【参加費】 10,000円
       *岐阜一の芸者さんの追善の舞と岐阜県邦楽協会長の献笛もあります



速報 2002年1月のFMICS

●新春1月のFMICSは恒例の葉山合宿例会です。FMICSらしさを十二分に体感することができる「こたつ合宿例会」です。●お仲間をぜひとも一言お声をお掛け下さい。昼プロ、夜プロのみの部分参加も大歓迎いたします。

【日時】 平成14年1月26日(土)〜27日(日)
          オリエンテーション  午後1時〜3時
          合宿FMICS   午後6時〜翌午前9時

【会場】  工学院大学新宿キャンパス  & 湘南・中央大学葉山寮



速報 2002年2月のFMICS

●歴史は明日を語る。中央教育審議会38答申から46答申までのわが国の高等教育に対する想いを検証いたします。21世紀答申(H10.10.26)と比較検討しながら、大学改革のヒントを探したいものです。●2月例会ですが、3月2日(土)になりますことお詫びいたします。

【日時】 平成14年3月2日(土)

【会場】  工学院大学新宿キャンパス

【テーマ】 (仮題)歴史は明日を語る
       中央教育審議会38答申と今日の大学

【スピーカー】 常葉学園大学 学長 斉藤 諦淳