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2001年6月のFMICS


“それ”は「ミッションマネジメント」

 FMICSに入会して10ヶ月。入会の理由を考えてみた。“それ”は学校という組織の中にいつも何かが足りないと感じていたためだと気が付いた。入会前は“それ”を言葉にはできなかった。

 2001年を迎え、大学を取り巻く環境の変化は急速である。「京大上京―東京駅近くにビジネス学校―」(朝日新聞2001年4月2日朝刊)、「早大に技術経営大学院」(朝日新聞2001年4月4日朝刊)など国立大学独立法人化に伴う大学への競争原理の導入、企業側の社員教育の委託が話題になったかと思えば、5月には「有力私大が連携受託会社設立―7月までに―」(朝日新聞2001年5月3日朝刊)という日本私立大学連盟の記事が朝日新聞の1面を飾った。大学も本格的なリストラ時代になったのだと誰もが強く感じたことと思う。確かに、アウトソーシングにより人件費を削減し一定レベルの技術力を確保することはできるかもしれない。また、目の前の競争に対して戦略を立てそれで一時的にはしのげることがあるかもしれない。しかし、その組織が半永久的に社会に存続するためには、考えなければならない重要な問題があると思う。「自分の所属する大学を一体どういう大学にしたいのか?」「誰のために教育を行い、そして研究をするのか?」 つまり、その大学の「ミッション」の問題である。

 こんなことを考えながら本屋をぼっとしていたら、アーサーアンダーセン著の「ミッションマネジメント 価値創造企業の変革」(生産性出版)に目がとまり思わず買ってしまった。この本の中で著者は、企業の経営活動の根底に存在するミッションおよびその周辺概念について次のように定義している。

 ミッション:企業の存続目的ならびに事業を表現していているもの

 ビジョン:企業の願望を表現しているもの

 バリュー:企業の価値観を表現しているもの

 この中で、ミッションとビジョンは変化するもの、バリューはそうそう変化しないものとしている。また、それぞれの関係を、ミッション(例えば人格教育を行なう)とビジョン(例えば社会のリーダーとなる者を育て、私学の中でトップとなる)は相互作用の関係、バリュー(例えば学生のことを第一義に考える)はミッションとバリューの牽制役で、その例として、バリューに合わない事業領域には進出しないこと(対ミッション)、いたずらに規模を拡大しないこと(対バリュー)を挙げていた。その他、実際に組織に適用するにあたっての「戦略設定」方法やそれを具体化するための「方針展開」として、「重点方針」、「アクションプラン」等について説明がなされていた。

 FMICSに入会し、今ではずっと言葉にならなかった“それ”が何かを明快に説明ができる。“それ”は「ミッションマネジメント」のことだったのだと。

(浅沼 雅之)



「大学人が忘れていること」

「経営者は長続きしないと知りつつ従来の人員配置のやり方を変えない。ろくに仕事がない…人も給与がもらえ、定年まで乗り切れれば文句はない。若い世代は疑問を感じても発言力がないという。

 小泉純一郎首相は『今日さえよければという考え方を捨て、明日を良くしよう』と、痛みのある構造改革を訴える。多くの人がこれにかっさいを送るが、…痛みが起き始めれば、賛否は割れてくるだろう」(日本経済新聞2001年5月22日夕刊)

 待ったなしの「変革」の時代が到来しつつあるようだ。しかしながら、私たちの足下を確認してみると、次の諸点を忘れてはいないだろうか。

1.学位授与独占権、免税特権、補助金給付

 社会的権威を源泉とした「大学3権」に対する反対給付としての責務を果たしているのだろうか。とくに後の2権は、かねてより企業の会員諸兄から指摘されてきた。権威は信頼の上に成り立つ。

2.経済システムの一環としての市場対応

 「20世紀答申」より以前に、丹内さんが常々指摘してきた視点である。市場の縮小・変化と規制緩和によりますます重要性を増し、この変化への対応の機敏さが「競争力」となって表われている。

3.旧制大学生より新制大学教員が多い

 西田亀久夫先生が指摘された視点である。さらに、18歳人口のさらなる減少と学習指導要領のいっそうの削減により、学生の側の質的低下もいよいよ深刻さを増していく。

4.直接・間接コスト負担者への意識存在

 「卒業生は終身株主である」と横田は言う。「民」には株主視点の企業経営、「官」には納税者への説明責任が問われている。残された公益法人、学校法人の経営は未だ「生産者視点」である。

5.「教育は国家百年の計」という先人の志

 近代日本の2つの「変革」期には、明治維新は列強からの独立、敗戦は戦災からの復興、という国家的危機感から教育改革が断行・強制された。3回目のいまこの危機意識が薄いことは疑いない。

 足立さんからはこれらに付け加えて、根元的な指摘をいただいた。

6.大学進学が当たり前の横並びの国民意識

 第1回のシンポジウムでは、木田先生と共に記念講演に立った戸田先生は「レーゾンデートル」を強調された。「○○だったら○○大学」とのお役立ちの個性化が21世紀の居場所づくりに繋がる。

 国政・県政では既特権に手を付ける構造改革の断行には高い支持率が必要とされる。教職員の痛みをともなう教育改善の断行には学生の支持が不可欠である。それをFMICSでは「学生(=民意)同志発想」と表現している。学生の成長を想うことを大学再生のパッションにしなければ、「自立化」時代の大学は国民から無視されてしま う。

 「改革できない理由を並べられても、そんなことは大学の勝手でしょう」。塀の外から大学を見つめる目は冷ややかであることも忘れてはならない。

(山本 明正)



FMICS 6月例会 (第414回例会)

●FMICSでは、激動する高等教育界を考えるために、審議会答申を読みこなそうという企画を平成11年12月からシリーズ化してきました。FMICSSDにおいても「戦後の大学政策を読み解く」をテーマに勉強を重ね、審議会答申をじっくりと読みこなせば、その時代は見えてくる確信するまでに至りました。●今月は、そんな確信を更に深めるためのFMICS創会20周年特別企画です。ゲストは元文部事務次官・新国立劇場運営財団顧問の木田宏先生です。テーマは「戦後の高等教育の展開と課題」。経済の高度成長と高等教育の拡大を座標軸として、昭和40年代の文部省と社会の動きをTHINK BIG に語っていただきます。●歴史に学ぶ。先生には道案内をお願いしました。さぁ、ご一緒に昭和40年代〜50年代の文部行政の最前線に足を踏み入れてみませんか。皆さまには、たくさんのお仲間をお誘い下さい合わせの上ご参加ください。

【日時】  平成13年6月16日(土) 午後2時30分〜5時50分

【会場】   工学院大学新宿キャンパス 低層棟6F0656号教室

*1Fで乗り換え、7Fから1階降りて下さい。

【テーマ】 21世紀の新しい大学のカタチを考える
       〜 戦後高等教育の展開と課題 〜

【特別ゲスト】 元文部事務次官・新国立劇場運営財団顧問 木田 宏 先生

【参加費】 会員:1000円  学生:500円  非会員:1500円

【申込&問い合わせ先】 出光 直樹  idemitsu@obirin.ac.jp


月例会一言案内

●21世紀の大学は何処に向かうのか。大学進学率は、昭和40年代の急上昇、50年代から60年代の伸び悩みを経て、平成に入り緩やかな上昇を続けています。今日、教育の荒廃が叫ばれています。少子化大学全入の時代、競争的環境の中での大学改革は、奇をてらった時代に流されたバタバタ改革ではなく、原理原則に忠実な学生のための“あったか改革”でなければなりません。桜美林大学大学院教授寺崎昌男先生は「歴史は明日を語る」と言われます。経済の高度成長と高等教育の拡大。ターニングポイントとなった昭和40年代〜50年代をあらためて点検いたします。なにが飛び出すか、それは同日のお楽しみ。当時、文部行政の最前線におられた木田先生のお話しにワクワクドキドキご期待下さい。

●「IDE現代の高等教育」NO.351(1993.12月号)座談会「戦後大学政策の展開」で木田先生は、次のように話されています。

 大学の拡張について、私が経験している主観的なことかもしれませんが、過去の経緯をみますと、第一が国民所得倍増計画(昭和35年)です。所得倍増計画のときに、池田内閣の政策に沿って、結果的には理工系拡充になったのですが、そのはね返りが池田正之輔さんの問題だっわけです。所得倍増を実施すると大学進学がふえるということで、昭和33〜34年のころから倍増計画の論議が進んできて、理工系はカネがかかるから国がやれ。人文のほうは私学が受け入れればいいんだからといって、閣議で大論争になって、荒木萬寿夫文相のような向こう意気の強い人まで引っ込んで帰ってきたわけです。これはあの時分に決定的な影響を与えたのではないかと思います。

 もう一つ、当時の天城調査局長が労作を残しておられる『日本の成長と教育』(昭和37年教育白書)のころは、国内だけでなくいろいろなところで教育投資論が活発になっている。経済審議会を取りしきってい大来佐武郎さんが、経済の発展と教育の関係はどうなるのかと、所得倍増計画のときに、官房総務課長だった私に聞かれました。経済が伸びるときに教育がのびないというのはぐあいが悪いから、同じようにもっていったほうがいいということを強く感じたのですが、そこで一つ手違いが起こったのが医科大学です。これが後に大きな波紋を起こします。

●黒羽亮一先生はその著書『戦後大学政策の展開』(玉川大学出版部・絶版/『新版・戦後大学政策の展開』2001.1が出版されています)「はじめ」に、次のように書かれています。

 最近の高等教育政策とそれに対する個別大学の対応を見ると、平成3(1991)年7月に行われた大学設置基準の大幅改正を契機に、ほぼ改正の趣旨に沿った教育課程改革、自己点検・評価項目の設定などがさかんに行われている。「大学改革」という言葉は、反論の許されない「天の声」のようになっている。これは昭和43,44年の大学紛争以前の政策・行政と個別大学との対立を経験している者の目からは、刮目すべき現象である。どうして、政策批判も充分に行われることなく、こういう時代となったのだろうか。それを明らかにするには、大学設置基準制定(昭和31年)、第一次大学生急増期(昭和41年前後)からの大学の状況と、それに対する政策展開の過程をできるだけ客観的に理解しておく必要である。そうすれば今日の大学改革の要望は、決して突然降ってきた「天の声」ではなく、日本社会の発展とそれに伴う教育爆発に、個別大学がその都度適切に対応していなかったために、集中的に出現した現象と見ることができるのではなかろうか。

 −中略−

 ともかく、大学を中心とした高等教育の拡大、つまり高学歴社会の出現は、明治以来の強固な国民の高学歴志向の結果である。そして第二次世界大戦後は数多い高学歴者が、個人としての福祉を達成し、その総体としての経済社会の発展を実現したのである。従ってその経緯と総括は、単に教育政策論という一分野の課題だけでなく、戦後社会論においても大きな位置づけをもっているものとおもう。


《 戦後高等教育関係年表 》
昭和31年10月大学設置基準(省令)制定
34年3月首都圏の既成市街地における工場等の制限に関する法律公布
35年 −安保反対運動さかん
10月経済審議会教育訓練小委員会/国民所得倍増計画に伴う長期教育拡充計画を報告
36年3月科学技術庁/科学技術者の養成について文部省に勧告
6月高等専門学校制度発足(学校教育法改正)
7月私立大学の学科増設・定員変更を認可制から届出制に
38年1月経済審議会/経済発展における人的能力開発の課題と対策答申
中央教育審議会/大学教育の改善について答申(38答申)
11月能力開発研究所(38.1発足)/初の能力開発テスト実施
41年 − 第一次大学生急増(18歳人口249万人)
43年6月学生紛争多発(115校)
東大安田講堂占拠(昭和44年1月機動隊封鎖解除)
44年4月中教審/当面する大学教育の課題に対応するための方策について答申
8月大学の運営に関する臨時措置法公布(5年間の時限立法)
45年7月日本私学振興財団発足・私学経常費助成開始
46年4月社会教育審議会/急速な社会構造の変化に対処する社会教育のあり方について答申(生涯教育提唱)
6月中教審/今後における学校教育の総合的な拡張整備のための基本的施策についての答申(46答申)
47年6月高等教育懇談会初会合/高等教育計画検討
49年6月大学院設置基準制定
50年4月短期大学設置基準制定
7月専修学校制度創設(学校教育法改正)
私学振興助成法公布
52年5月大学入試センター発足
*IDE NO.351を参考に作成



YFN 6月例会 (第415回例会)

●今月のYFN・名古屋FMICSのスピーカーは、中村学園大学教授山田達雄さんです。FMICSの名付け親の山田さんは、草創のころからのご意見番のお一人です。国立教育研究所から故郷の福岡へ転出されました。●お話いただくテーマは、「学校と企業のパートナーシップ」です。ここのところの研究テーマだそうです。産学連携の地方におけるあり方を九州にて調査された結果を発表していただきます。●皆さまには、お仲間をお誘い合わせの上ご参加下さい。

【日時】 平成13年6月25日(月) 午後6時半〜9時

【会場】  岐阜県羽島市間島 割烹 鯉正
     TEL: 058−391−7325

【テーマ】 21世紀の新しい大学のカタチ考える
       学校と企業のパートナーシップ

【発表者】 中村学園大学教授 山田 達雄

【参加費】 4500円・懇親会費込み

【申込先】 YFN 事務局 林 憲和  nhayashi@ha.shotoku.ac.jp



FMICS SD 118

●FMICS Staff Development 略して 「SD」は、月例会とは別に、原則として第3週の木曜の夜に開催されている勉強会です。超競争時代をしたたかに活き抜くためにも、大学人一人ひとりの努力を束ねる場です。●今月からは、知る人ぞ知る『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)を読み込みます。大学審議会「21世紀答申」(平成10年10月26日)の下敷きになったともいわれるレポートからは、学ぶことが多いことと存じます。これを機会に、あなたの座標軸をブラッシュアップはいかがですか。奮ってご参加下さい。

(1)メディアチェック
 あなたのアンテナが何かを感じた新聞・雑誌等の教育&経済トピックスを、切り抜いて持ちよりディスカッションします。トピックスは厳選して1件、A4縦判にコピー(15枚程度)して、氏名と簡単なMEMOを付してご持参ください。
 各自5分間程度のコメントをしていただきます。

(2)テーマを定めた継続的な勉強会
 1997年度は国立教育研究所編『日本近代教育百年史』を、1998年度は工学院大学と拓殖大学の沿革史を、1999年度前半は『戦後の大学論』を読み進めてきました。そして、1999年度後半からはぐっと現代に近づき、中教審、臨教審、大学審等の「答申」を読み込んできました。今月からは、『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』(通称デアリングレポート)を読み込みます。

【日時】 平成13年6月21日(木)  午後6時30分〜9時
      *7月の予定 7月19日(木)

【会場】  工学院大学・新宿キャンパス 高層棟27階2710ゼミ室

【テーマ】 21世紀の大学の原理原則を探る
       戦後の大学政策を読み解く −21−

【コーディネーター】 桜美林大学大学教育研究所 研究員 出光 直樹

【テキスト】 『英国高等教育制度検討委員会(デアリング委員会)報告』
         *コピー(実費)をお渡しします。

【申込先】 出光 直樹  idemitsu@obirin.ac.jp



速報 YFN シンポジウム 9月8日(土)&9日(日)

●やっとかめやなもFMICS名古屋(YFN)の《学びのカタチ》を束ねる恒例の第15回YFNシンポジウムをご案内します。

●まずは、聖徳学園岐阜教育大学でのシンポジウムです。講師(予定)は、前トヨタ営業本部長で、トヨタの新規事業として岐阜に新しくできた世界初というオートモールショッピングセンター、カラフルタウン社長で立教大学校友会副会長でもある小泉直氏。前早稲田大学副総長我らが村上義紀さんと東北大元教授で心療内科の草分け的存在で日本身心医療学会長とアジア身心医療学会長を務めた鈴木仁氏です。

●懇親会は長良川上流の鮎料理やなで舌つつみ。洞戸村の禅道場での夜プロは、YFN主催 洞戸教育文化フォーラムとして、村長さんや地元県議や地元の方にも参加していただき、初等中等高等教育界からそれぞれ現代の教育を語ってもらいます。FM1CSが村おこし・村の文化発信に一役担うという心です。

●詳細は、BIGEGG8月号でご案内します。

YFN 事務局 林 憲和  nhayashi@ha.shotoku.ac.jp